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第二夜 小夜の呪縛
それは明治の頃だったか、いや、大正だったか、いや……昭和に入ってからかもしれない。
大徳寺家の当時の当主・源蔵は当時、五十の坂をふたつみつよつ越した頃の壮年だった。
しかし、源蔵はある日、見目麗しい一人の少女を無理やり連れ帰り愛妾とした。
もちろん、彼には妻もあり子もあった。
世間のことを慮って妻は彼を諌めたが、老いらくの恋に溺れた源蔵は決して耳を貸そうとはしなかった。
連れてこられた娘の両親も当然黙ってはいなかった。
彼らは毎日のように大徳寺家を訪れ、泣いて訴えたが、彼は聞き入れなかった。
そして、とうとう源蔵は相当な金を娘の両親に支払い、彼女を大徳寺家へと閉じ込めてしまった。
彼女の部屋の窓には鉄格子が張り巡らされ、扉には頑丈な鍵が下ろされた。
彼女(小夜という)は毎日泣き暮らした。噂では彼女には既に言い交わした恋人がいたのだという。
彼女はもう会うことの叶わなくなった恋人に想いを馳せるように、唯一、日差しが差し込む西の窓から鉄格子ごしに空を見て暮らした。
そんな西の壁には彼女の涙が染みになったという。
彼女が連れて来られてから五年の月日が流れた春のことだった。
突然、彼女は発狂した。
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