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第三夜 ライバル対決!!
「しゃ、社長~!」
突然響いた、そのなんとも間抜けな声に振り返ると、正二郎の秘書・松岡の姿があった。
ただでさえ、ピンの甘い顔立ちなのに、寝癖は爆発しているやら、パジャマはぐちゃぐちゃやら、なんとも情けなさ120%増量といった出で立ちである。
彼は一目散に変わり果てた上司の元に駆け寄ろうとしたが、巨木のような紀田警部補に押し止められた。
「しゃ、社長……。これからどうしたらいいんだ……」
彼は紀田の腕の中でしょんぼりと肩を落とした。
妙にアクの強いキャラだったが、今はモノ言わぬ骸と成り果てた正二郎を見ると、人の命の儚さを思い知らされる。
私は、シーツをかけられ静かに運び出される彼にそっと合掌した。
「業彦。どうするんだ?起きちまったぞ。ついに第二の事件が……」
さすがの紀田も強張った顔で業彦の背中に声を投げ掛けた。
「決まっているじゃないか」
業彦はゆっくりと振り返ると、現場に似つかわしくない快晴のような笑顔で言った。
「解決するだけさ」
*
「さて、紀田君。そろそろバタバタしていてうやむやになっていた、第一の事件。つまり、大徳寺雪矢さんの事件について聞かせてもらえないだろうか?」
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