お年玉

「神和我綢繆完了、記憶網羅、汝に捧げん──」
「すばらしい！」岡野先生が長い髪を揺らしながら、校長先生を仰ぎ見た。

　そして彼らは突然、高笑いをし始めた。大人の男性にしては甲高く、悪魔に取りつかれたような声音である。段々と怖くなってきた僕は、後退るようにして部屋を後にした。

しかし、有益な情報が得られたのは事実である。確かに大人たちにお年玉のことを尋ねるより、お年玉を保有しているひとに直接見せてもらった方が早いだろう。
　僕は次に、親戚の孝弘兄ちゃんのもとへ向かうことにしてみた。孝弘兄ちゃんは大学生でまだお年玉はもらっているだろうし、物知りで、僕が趣味でやってる中学の勉強でも、分からない点をノートに羅列して孝弘兄ちゃんのところへ持っていけば、精緻に問題を解説してくれる。

　きっと彼なら僕の望むすべてを提供してくれるはずだ。そうして僕が、すっかり葉の枯れ落ちた街路樹が両脇に並ぶ、細いレンガの道を歩いていると、大きな噴水が見える公園の方から大きな声が聞こえてきた。

「はっはーは！　コイツは上物の“お年玉”だぜ！」