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お年玉? そのワードを聞きつけ、僕は声のする方へと向かった。ここでお年玉がみられるなら、わざわざ孝弘兄ちゃんの家まで行く必要性はないだろう。
公園に入ると、声は公衆便所の方から聞こえているのが分かった。僕は走ってトイレに行き、声のするのが男子トイレであることを確認すると、中へ足を運んだ。
黒ずんだコンクリートの壁に囲まれたトイレは、男のうめき声が響いている。個室の大便用トイレの扉が二つ空いていたので、中を覗いてみると、そこにはみすぼらしい格好をした中年の男が座っていた。男はよれよれのシャツの上にボロボロに破れ、布が剥がれ落ちたレーザージャケットを着ている。見るからに寒そうな服装だ。
男は首だけ扉から出して中の様子を凝視する僕の存在に気づき、高らかな声をあげた。ろれつが回っていなくて、酔っぱらっているような喋り方だった。
「なぁんだおめぇ? おれぁを殺しに来たのか?」
「違います」
何故男がそういう思考になったのかを考える前に答えた。奇異なことは先ほどの学校でも体験したせいか、対して気にもならなかった。
「あの……僕お年玉が見たいんです。さっきあなたが手に入れたという趣旨の発言が聞こえてきたもので……」
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