醜い姫

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小国のお姫様。 西の国のお姫様、リィーラ姫。 彼女は十七歳のお姫様であり、細身の少女だ。 だが、彼女には噂があった。 ーーー醜いお姫様。 仮面の下の顔は酷く醜く、見た者は思わず悲鳴を上げてしまうほど恐ろしいものだと人々は噂しているのだ。 リィーラ姫の素顔を見た者は両親以外誰もいない。 幼い頃から仮面をつけて育ったリィーラ姫は自分は醜いのだと自覚し、仮面を人前では外すことはなかった。 そんなリィーラ姫は五ヶ月前に世界の王となる若き王の花嫁候補として城へと招かれていた。 絶対的権力を持つ世界の若き王、シャルンは二十歳にしてこの世界を統べる王であった。 彼は冷酷な王として時に人々を怖がらせている。 その若き王にはたくさんの花嫁候補がいるが、ただ一人リィーラ姫だけを自分の城へと招いているのだった。 人々はそれがどうしてなのか全く分からなかった。 わざわざ醜い姫を城へと招くなど相当変わった趣味をしているのだと噂が飛び交っている。 リィーラ姫はほっそりとした体に似合う蜂蜜色の艶やかな髪に、仮面の穴から覗く美しく輝く蒼い瞳の色をしていた。 これだけなら美しいのだが、顔を覆っている仮面の下は酷く醜い。 声は鈴を転がしたように美しい。 心優しき少女なのだが、醜い姫だと言われ、人々から気味悪がれ、罵声を浴びせられていた。 若き王の狙いとはーーー そして、リィーラ姫には秘密が隠されていた。
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