醜い姫

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幼き頃から仮面をつけ、生活している私にとって仮面は大切なものであった。 誰もが私のことを醜い姫と呼ぶ。 自分でもそれは分かっている。 私の顔は醜く、人には見せてはいけない顔なのだと。 そんな私を花嫁候補として選ばれ、何故か世界の中心にあるリグナシュの国のお城へ招かれ、そこから五ヶ月は過ぎている。 世界の若き王シャルン様はどうして私だけをこのお城へ招いてくれたのだろうか。 無駄に広すぎる部屋で私は居たたまれない。 私が使っても良いお部屋なのだろうか。 「私、嫌よ。あんな醜いお姫様のお世話をするなんて……」 「私だって嫌だわ。でも、仕方がないのよ。シャルン様の命令なんだから」 そんな声が扉越しからでも聞こえてきた。 この部屋を通る世話係の方が私のことで話しているのだろう。 「……ごめんなさい」 そう私は呟く。 こんな醜い顔の私に近づきたくもないはずなのに、色々と世話をしてくれているのだ。 どうして私はここにいるのだろう。 シャルン様は私を好きではないのに。 そんな事を考えていると、扉が開き、入ってきた人物にドキリと胸が高鳴る。 「明日は王族のパーティーがある。準備しておけ」 涼しげな低い声。 淡い空の色の髪に涼しげな目元の黒の色をした瞳。 誰もが息を呑むほど美しい端正な顔立ちである。 二十歳でこの国の王になった若き王。 冷酷な王だと皆が噂をしていたのを耳にしたことがある。 けれど、私はそうは思えなかった。 シャルン様はどうして私だけをこのお城に招いてくださったのですか? そう聞きたいのだけれど、その言葉は喉の奥へと消えていく。 「……はい」 私がそう静かに答えると、シャルン様は無表情の顔で、私へと背を向ける。 「はーっ」 背を向けたシャルン様から溢れるため息。 そのため息に私の肩が小さく震えた。 怒らせてしまった?! 機嫌を悪くさせてしまったのか?! そのまま部屋を出て行くシャルン様の背中を私は困惑しながら見つめていることしかできなかった。 私には分からない。 シャルン様は私をどうしたいのだろうか。
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