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そして、王族の方々が集まるパーティーがこの城で行われようとしていた。
先に着替えを終えた私は窓辺へと近づき、静かに外を眺める。
辺りは薄暗い。だが、まだ星は出ていないようだった。
私の世話係をしてくれている方が先ほどドレスを持ってきてくれて、すぐさま部屋から出て行ってしまった。
露出控えめの葡萄酒色のドレスだ。
腰に届くほど長い蜂蜜色の髪を結い上げて、真珠の髪留めで飾った。
窓辺から外を眺めていると、遠くの方から馬車が続々とこちらへ来ているのが見えた。
馬車が進んでも、一向に城には近づいていない。
それほど庭が広く、建物が大きい。
それから、やっとの思いで着くとそこには潔白の王城が屹立する。
私も初めは驚きを隠せなかったのを覚えている。
今でもまだ見慣れていないが。
外装は簡潔に、内装はこれでもかと贅を尽くしている王城だ。
パーティールームには各々の国の王族が集まっているだろう。
私は怖くなり足がすくんでしまう。
パーティールームにはいけない。
皆の視線が怖いのだ。
けれど参加しなければシャルン様に失礼だ。
せっかくのお誘いなのだから参加しなくては。
私は王族の方々がいるであろうパーティールームへと足を向けた。
パーティールームへと近づくと居並んだ執事たちの黙礼と過剰すぎる内装に出迎えられて中へと進んでいく。
パーティールームは星の満ちる夜空を模している。
灯りが綺麗に照らされ、そこにたくさんの人々が楽しそうに話していた。
そこへ私が入っていくと、王族の方々の視線が少しずつ私へと向けられていくのが分かった。
「あれって噂の醜いお姫様でしょ?」
「あんなのが花嫁候補なんてどうかしているわ」
「頼むからこちらには近づかないでほしい」
「あの仮面の下は醜く、化け物みたいな顔なんだってな」
軽蔑した眼差しを向けながらこそこそと話す王族の方々。
私は王族の方々に視線を向け、一人ひとり一礼しながら挨拶するようにした。
だが、私と目を合わせたくなかったのか私が視線を合わそうとするとすぐに逸らされてしまう。
私は胸の前で祈るように手を組み、それに耐えながら奥へと進む。
進んでいくと誰かの白いハンカチが落ちていた。
私はそれを拾い、埃を払うようにして持ち主を探すように、辺りをキョロキョロと見回した。
「あ!それ、俺のです」
男性の声がし、私はその人物へと振り返った。
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