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私が振り返ると、目の前の男性は途端に顔を引きつらせ、苦い顔を浮かべた。
「それに触るな!気持ち悪いっ」
そう言って私から白いハンカチを乱暴に奪い取り、
足早に去っていく男性。
それを見ていた王族の姫たちは嘲笑うかのようにクスクスと笑っていた。
「あの醜いお姫様がいたら楽しいパーティーも台無しよね」
「場違いなのに、どうしてここにいるのかしらね」
皮肉った笑いを含ませながらそう告げる王族の姫たち。
「きゃあああっ!シャルン様!!」
「シャルン様よっ」
途端に辺りは黄色い歓声に包まれた。
たくさんの王族の姫たちに囲まれているシャルン様が遠目からでも見える。
シャルン様の白を基調とした軍隊のようなスーツが見惚れてしまうほど美しく輝いて見える。
私にとって貴方はとてもとても遠いーー
私は貴方に近づくことさえ許されない。
こんな醜い私が貴方の側にいったら、シャルン様に恥をかかせてしまう。
貴方の側にいられないのに、他の女性の方々がシャルン様とお話したり、スキンシップを取っているところを見ると、胸が締め付けられて苦しい。
それに耐えきれず、私はこの場から離れるようにし、広すぎる庭へと出た。
手入れされた花のある綺麗な庭へ行くと、一人の青年がいた。
「ったぁ!指切っちゃった……」
顔を歪ませ、血が流れる親指を見つめている男性。
私は心配になり、胸ポケットから白のハンカチを取り出し、青年へと駆けつけるようにした。
私へ気がつくと青年はハッと驚くような表情を浮かべる。
「私のでごめんなさい。ですが、そのままではいけませんので……宜しかったらお使いください」
おずおずと目の前にいる青年へ白のハンカチを出すと、青年は戸惑いながらもゆっくりと白のハンカチを受け取った。
何も言わない青年に私は怖くなった。
余計なことをしてしまったのだろうか。
迷惑だったのではないだろうか。
私のハンカチなど使いたくなかったはずだ。
「ーーごめ……」
「せっかく綺麗な白のハンカチなのに汚しちゃってごめんね」
謝ろうと声を上げた瞬間だった。
目の前の青年が優しい口調で言い、申し訳なさそうな表情で私を見ていた。
夜を思わせるような暗い髪色の緩く波打つ髪、ほんの少し灰色が混じったような不思議な瞳の色の目鼻立ちがハッキリとした顔立ちの青年であったーー
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