醜い姫

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目の前の青年は一礼し、ゆっくりと口を開く。 「俺の名前はユナンって言うんだ」 「私の名前はリィーラと申します」 初めてだった。 あちらから気さくに返事を返してくれるのは。 私は嬉しくなり、自分の名前を述べた。 「じゃあ、またパーティーで」 無邪気な笑みを浮かべ、この場を去っていくユナン様。 私はそんな少年の背中を見送った。 久しぶりに人ときちんとお話できた。 心が温かくなり、ほぅ、と小さな息が出る。 「こんなところで何をしている」 後ろから低い涼しげな声がし、私はハッとしたように振り返った。 振り返ると先ほどパーティールームで女性の方々に囲まれていたシャルン様が立っていた。 「あの……怪我をされた方の……」 私が戸惑いながら答えようとしていると、シャルン様の眉がピクリと動く。 「勝手な行動をとるな」 そう言う無表情の彼のその瞳の奥は冷たく輝いていた。 私はシャルン様が怒っているように感じた。 「も、申し訳ありません」 慌てて私は謝り、深く頭を下げるようにした。 私のせいでシャルン様の気分を悪くさせてしまった。 「ですが、私がいると皆様の気分を悪くさせてしまいます」 軽く瞳を伏せ、小さな声で言い私はシャルン様の言葉を待つ。 「そのようなことはどうでもいい。お前が笑われていようとも、気味悪がられていても、皆が気分を悪くしていても、私には関係のないことだ」 冷たい口調で淡々と告げる目の前にいる美しい彼は心底冷めきった表情を浮かべていた。 私の胸がぎゅうっと締め付けられる思いがしたが、どうすることも出来なかった。 何も言い返すことも、感情を剥き出しにすることも私には出来ない。 ただ自分の胸が苦しくなるだけだーー 「お前は花嫁候補ではなく私の所有物だ。モノは私の言葉だけに従っていれば良い」 冷たい声でシャルン様に言われ、苦しくなる胸を抑えながら私は小さく口を開く。 「……はい」 仮面をつけていて良かった。 今の私の顔は更に醜くなっているだろう。 私は花嫁候補ではなかったのか。 初めから可笑しいと思っていたのだ。 珍しい私を面白がって側に置いているのだろう。 「分かったなら早くパーティールームに戻れ」 そう言いそそくさとパーティールームへと向かうシャルン様。 私もパーティールームへ急いで戻ろうとした時であったーー
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