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ーー*アランside*ーー
北の大国ガランダの第二王女である私を誰もが口を揃えて言うーー絶世の美女だと。
それは私も分かっていることだ。
自分の美貌が誰もを魅了していることを。
私が微笑めば男は皆私の虜だ。
『アラン様は本当にお美しい』
ーー分かっているわ。
『そなたこそ絶世の美女です!』
ーー当然のことを仰らないでくださいませ。
そればかり、本当につまらない。
私が美しいのは当然なのだから。
けれど、若き王シャルンだけは違う。
私を見ても何の感情も感じさせない彼の無機質な瞳。
何処か冷たい眼差しは怖いと思うと同時に美しいと思えてしまう。
淡い空色の髪に涼しげな目元をした黒の瞳、男性も女性も見惚れてしまうほどの酷く美しい端正な顔立ちをした若き王シャルン。
花嫁候補として名が上がった時はとてもとても嬉しかった。
だが、シャルンの王城には一人の姫だけが招かれていると知り、沸き上がる嫉妬を抑えられずにいた。
西の小国の姫、リィーラ様。
彼女には変な噂があった。
奇妙な仮面をつけ、その顔は酷く醜いと。
そんな姫をシャルンはどうして自分の城へ招き入れたのだろうか。
私は招かれてなどいないのに。
誰もが私をシャルンの花嫁候補として最も近いと言っていたがーー
私もそう思っていた。
シャルンとの婚約も時間の問題だとーー
シャルンは私を好きになってくれると。
誰よりもシャルンの近くにいる。
当然のように隣にいることだって、触れることだって出来る。
なのに、貴方の心はここにない気がした。
私が一番近くにいるはずなのにーー
初めて西の小国の姫リィーラ様を見た時は思わず鼻で笑ってしまった。
やはり、私の美しさに勝てる者などいない。
シャルンにお願いをすれば、リィーラ様が持っている薔薇の髪留めも奪い取ることだって出来た。
リィーラ様はシャルンに大切にされてはいないと分かった。
リィーラ様がいるとため息ばかりついていたのを思い出す。
シャルンはリィーラ様を所有物のように扱っているのだろう。
そう思うとリィーラ様が憐れに見えた。
奇妙な仮面をつけてシャルンに近づくなど無礼にも程がある。
身の程をわきまえた方が良い。
貴方はーー
シャルンの所有物でしかないのだから。
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