交錯する想い

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それから暫くしてリィーラ様の体調が良くなったのと同時にシャルンに会うことを許された。 シャルンの私室に入れる花嫁候補は私だけである。 他の花嫁候補はここに入ったことなどない。 私だけの特権なのだ。 私室の扉からからノックの音がし、扉が開くとギルが一礼し、室内へ入ってくる。 「先ほどリィーラ様がシャルン様のお部屋の前にいたのですが……」 不思議そうな表情を浮かべながらそう話すギルにシャルン様の眉がピクリと反応した。 すぐさま、シャルンは部屋から出ていこうとする。 「シャルン何処へ行きますの?!」 私がそう声を上げると、こちらを振り返ることなくシャルンは部屋から出て行ってしまう。 「まあまあ、アラン様落ち着いてください」 部屋を出て行ったシャルンを追いかけようとすると、目の前にギルが立ちはだかるようにして私を宥める。 私はそんなギルを軽く睨み付けるようにした。 「ギルは私の味方ではありませんのね?!」 「味方ですけど……味方なんですけどねぇ」 軽く睨む私に、ギルは少し困ったような、複雑そうな表情を浮かべながら自分の頭を掻いていた。 シャルンはどうして私から離れていってしまったのだろうか。 リィーラ様を探しに行ってしまったのだろうか。 私はギルの横を通り抜け、部屋から出ていく。 後ろから私を引き止める声がしたが、振り返ることはしなかった。 ただ必死にシャルンを探し回る。 この城内にいる貴方の姿を。 周りにいる兵士や執事たちに聞き、シャルンの居場所を突き止めた。 中庭にシャルンはいる。 私はシャルンの名を呼びながら彼の腕に触れるようにした。 少し離れただけで私はとても寂しくなった。 私にはシャルンしかいないのだ。 嬉しくなり、シャルンの腕にすがりつくようにすると目の前いる人物に気がつき、私は少し驚いた。 リィーラ様と目が合う。 彼女の蒼い瞳が、強張ったのを見た。 奇妙な仮面をしていて表情をよく分からない。 どうして。 どうしてですの。 シャルン、どうしてリィーラ様と一緒にいますの? 私は早くシャルンをリィーラ様から離したかった。 彼の腕を引き、無理矢理にこの場を離れるようにした。 シャルンが顔を俯けるリィーラ様に振り向き、 「……後で行く」 そう涼しげな低い声で言った。 私は思わず目を見開きながらシャルンの顔を見上げていた。
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