醜い姫

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何もかも惨めな自分。 こんな姿でパーティールームに戻れる訳がない。 「私はモノです」 窓辺に近づき、窓の外の蒼白い月を眺めながら、私はそう呟いた。 そう思っていた方が良い。 その方が悲しみに心が震えることはない。 自分のドレスをクローゼットの中から取り出す。 私のドレスで大丈夫だろうか。 可笑しな部分はたくさんある。 けれど私はシャルン様のモノだからーーー ーー大丈夫です。 姿見の前に立ち私は胸に手をあて、そう自分に言い聞かせた。 白のドレスを選び、大きく広がったドレスの裾はまるで花が咲いているかのようだった。 鏡に映った自分の顔を見ることが出来ない。 どうしても自分の顔を見るのが怖い。 それなのに、素顔を皆様に見せて良いのだろうか。 私に拒否権などない。 シャルン様にご迷惑だけはかけられない。 勝手なことをしてシャルン様のお側にいられないかもしれない。 シャルン様のお側にいられないことは嫌です。 ーー私はモノです。 心のうちで呟く。 何度も何度も心のうちで呟き、何とも思わないようにする。 胸の痛みも感じない。 微塵も悲しくない。 シャルン様のお側を離れるぐらいなら私の心の痛みなど軽いものだ。 震える手に力を込め、ふーっと大きく息を吐く。 ゆっくりと扉を開き、私は重たい足取りでパーティールームへ向かった。 パーティールームからは楽しそうな笑い声や話し声がしてくる。 瞬間、一気に変な緊張が自分を襲った。 パーティールームの中へ入ると、少しずつ視線が自分へと向けられていくのが分かる。 怖い!! ーーそんな恐怖が自分を襲い、額に嫌な汗が滲んでいく。 両親以外に初めて人に晒す自分の素顔。 ーー醜い自分の顔を見れば誰もが悲鳴を上げるに違いない。 ざわざわと先ほどとは違うざわめきが起こるパーティールーム。 人々の視線は私へと注がれていく。 瞳を見開かせ、驚愕な表情で私を見ている人々は声も出せていないようであった。 それほど私の醜い顔が衝撃的だったに違いない。 嫌ですっ。 怖いーーーーー 不意に遠くにいるシャルン様と目が合ったような気がした。 彼の涼しげな目元の黒の瞳が驚きにより見開かれているのが分かった。 けれどそれはすぐに逸らされ、私は胸に手をあて、唇を軽く噛み締めるようにした。 私の顔が醜すぎてシャルン様は嫌気がさしたのだ。
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