第一章

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「すごいね。たくさん友達がいるんだな」  感心した調子の男に、俺はつい気をよくして背筋を伸ばす。 「ま、まあ、このゲームの中じゃちょっと名前も知られてるっつーか」  口にしてすぐに、女の子として、と心の中で付け足す。  最初からネカマになって騙そうと思っていたわけじゃない。けれど皆に姫と呼ばれてチヤホヤされるのは、日常では味わえない満足感があるのだ。今さら男とは言い出せない。  男は一通り見て満足したのか、自分の携帯を確認してからふと手を差し出した。 「じゃあ僕は帰るよ。その前に」 「え? ……えっと?」  まさか握手かと思い、恐る恐る手を乗せようとすると彼は首を傾げた。 「違う。携帯貸してくれ。大家に文句言うから」 「え、でもそれ、携帯」 「僕の電話は大家に繋がらないんだ。もう随分と前からね」  俺はため息をついて、自分の携帯を渡した。もしかしたら幽霊が出る部屋だった方がましだったかもしれない、なんて思いながら。
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