第一章

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 その質問は、嘲りが一切なく、純粋そのものだった。 「まあ、楽しい、……ですけど」 「君のキャラはどれだい?」 「この、……」  あまり詳しくなさそうだから、ネカマをやっていることはバレないだろう。でも、いい年の男が女の子のキャラでプレイしていること自体引かれるかもしれない。  昨晩の妹の言葉が頭を過ぎって、言葉を濁していると、画面に形のいいほっそりと長い人差し指がのびた。 「この子かい?」 「そ、そう」  俺は内気だしゲームや漫画が好きな典型的なオタク気質だから、そういう趣味を理解のない人に笑われたり、馬鹿にされたりすることはいつものことだ。けれど何度体験しても気分のいいものじゃない。その衝撃に備えて手の平をぎゅっと握りこんでいると、男はまた「へえ」と感心したような声を上げた。 「可愛いね」  はっとして見上げると、男は画面をまじまじと見ていて、少しも馬鹿にしたようなところはない。思ったより嫌なやつではないのかもしれない。 「ここの数字は君の友達の数なのかい」 「あ、うん」
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