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――らふぁ:へえー。そんな人いたんだ
――キナリ:マナ姫引っ越したばっかりなんだっけ
――らふぁ:俺がいたらそいつぶっ飛ばしてたのに笑
――マナ:そうなの。また会わないといいなあ。
(お隣さんにもまだ挨拶できてないし、不安……っと)
エンターキーを押す。
数秒の間に次々画面に出てくる励ましの言葉に、俺は思わず頬が緩む。そうだ、これだ。これこそ俺の世界だ。友だちも彼女もいない俺の唯一の居場所。俺を受け入れてくれる場所。
仕事を在宅に変えたのをきっかけに引っ越し、今までと違うことをしてみようと勇気をもって喫茶店に入ってみたけれど、結果は散々たる有様だ。やはり外になんて出るもんじゃない。
(すこーし見た目がいい男にビビって逃げ帰ったからなんだ。俺はオンラインゲーム「クロノア」の中ではちょっと名の知れた姫なんだからなっ)
ついさっき受けた心の傷を癒そうとさっそくログインしたが、効果はてきめんだ。馴染みのユーザーからの言葉に安心する。
――キナリ:マナ姫の隣に住めるなんてウラヤマ
――らふぁ:逃げて正解だな。女の子の一人暮らしは気をつけないと
(まあ、女の子じゃねえけど)
ツインテールで幼児体系キャラの向こうに、二十五歳の、どう好意的に見てもフツメンの男がいるとは思わないだろう。
俺はすぐに「ありがとう気をつけるねっ」と語尾に星をつけてエンターキーを押した。
振り返れば七帖の男の部屋が広がっている。数か月前までは今より狭い社員寮にいたために荷物はそれほど多くないけれど、人生初の一人暮らしにテンションが上がって買ったセミダブルのベッドが部屋をぐっと圧迫している。
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