第三章

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(こんなことなら早く風俗行ってみりゃ良かったな)  挿入されるのはもちろん気持ちいいけれど、やはり男として生まれたのだし挿入する側も体験したい。ルイに言ったら鼻で笑われてしまったけれど。 「ああ、仕事が最近上手くいってるんだ。だからかも」  ルイとの契約にあったので、俺は渋々イエスマンになった。今まで受けなかったタイプの仕事を受けたのだ。普段とは違うことで色々と手間取ったけれど、一応は満足してもらえる仕上がりになったと思う。一つ終われば次から次にそのボリュームの仕事が来るようになって、最近ではゲームをする時間がほとんどない。けれど、ここ数年で一番充実した毎日を感じている。  二美はいかにも興味がなさそうに声を出す。 『ふーん。そんなことよりルイさんは? まだ写真送ってくんないの?』 「お前本当に、そういうの良くないよ……」 『お母さんに言われてるからって、毎週お兄ちゃんの聞きたくもない日常聞かされる身にもなってよ。まじでつまんない。まじで興味ない。まじで、ーー』 「そうだろうね。彼が最近した冒険は新発売のソーダを試すことぐらいだ。全くつまらないよ」  まじでの癖が語気荒く乱発し始めたので、あまりの煩さに携帯を耳から放すと、通り過ぎざまルイにそれをもぎ取られた。彼は自然に会話に参加すると、目を細めて人の良さそうな笑顔を浮かべ、相づちを打っている。 「おい、返せよ」 「へえ? それは本当かい。……ふふ、困ったお兄ちゃんだね」  俺の言葉にルイは口元に人差し指をあて、二美と楽しく談話を続ける。こうなってはもう手の出しようがない。俺に出来ることといえば無言でパソコンに向かい仕事をするくらいだ。 (人の妹になに愛嬌ふりまいてんだ。まだ高校生だぞ)
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