アレ

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 神社に向けて歩いているときの事だった。 「おい」  突然。ぼろ布をマントみたいに巻いたやつが目の前に立ちふさがった。顔だちも日本人っぽくないし、髪もなんか深緑色だし。マントはともかく、足元がサンダルってのもどうかしてる。寒く無いのかな。 「オノデラタカユキだな?」  妙な発音だった。何て言うか、外人が言い慣れない日本人の名前を言ってる感じ。  でも、名前は確かに俺の名前。 「そうだけど?」 「アレを渡して貰おうか」 「あれ? 何?」 「アレって言ったらアレに決まっているだろう。ふざけているのか」  そりゃこっちのセリフだ。 「しらねーよ。アレってなんだよ。もっと具体的に言え」 「……具体的?」 「詳しくって事だ。もっと丁寧に言ってくれ」 「詳しくも何も……アレだよ? 分かるだろ? つるっとして柔らかな光沢がある……。何て言えばいいんだ?他に言い様がない。アレだ」 「知らねーって言ってんだろ。そもそもお前誰だよ」 「俺はキャナフ。ミースレッドの呪い師だ」  おー、正月早々出来上がった奴に絡まれたもんだ。 「とにかく知らねぇって。じゃあな」  俺はそのまま歩いてそいつの横を通り抜けようとした。     
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