アレ

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 だが、その瞬間、腕をぐっと掴まれた。結構な力だ。痛い。 「痛いよ!!」 「ふざけている場合か。アレは確かに美しい。けど、同時に危険な物なんだよ。頼む、返してくれ。アレが解放されればどんな恐ろしい事になるか、俺にだって想像がつかないんだ」  そこはちゃんと固めて来て頂かないと。 「だから知らないって言ってんだろ。俺の何が欲しいんだ」 「アレだって言ってるだろ? お前が子供の頃に間違って親父が売っちゃったんだ。ほら、これだよ」  そう言ってアイツが取り出してきたのは折りたたんだ札。色からするに千円札か。  今の俺からすれば喉から手が出るほど欲しい。 「金は返す。だから頼む。アレを返してくれ」 「返してやりたいよ。金も欲しいし。けど、アレって何なんだよ。俺にはさっぱり分からない。心当たりが無いんだ」  クソ、からかってんのかこいつ。  俺が貧乏人だと思ってバカにして。  真面目な顔まで頑張って作って。どうせ心の中じゃ笑ってんだろ。 「あ、待てよ? ひょっとして、あれかな?」 「お、思い出したのか?」  キャナフとやらが凄い力で俺の両肩をつかんだ。 「ああ、思い出したよ。間違いないアレだ」 「そうか、良かった……。探しに来た甲斐があった……」 「けど、一つ問題があるんだ」 「何だ?」     
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