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「実は俺今借金しててな。今から返せないって話をしに行かなきゃならないんだ。相手は少し厄介な奴で、まあ、話は長引くと思う。待っててくれるか?」
「借金? 金を借りているのか?」
「ああ、そうだ」
何か思い悩んでいる顔。だが、やがてその目が俺の方を向いた。
「こ、これで足りるか?」
そう言って差し出したのはさっきの千円。
「俺も、この世界の金と言えばこれしか持っていない。どうだ?」
「ああ、足りる。ちょうどそれでびったし足りるよ」
「そうか。では使ってくれ。なに、元々お前の金だ。構いやしない。その代わり、アレを……」
「分かってる。返すよ。約束だ」
「ああ、ありがとう。良かった……」
ほう、と息を吐くキャナフとやらから千円札を受け取り、俺は足早にその場を去った。
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