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……俺、ガキ大将なんだよな。
自分に問いかける。
今までは自信が持てていたのに、今日、それが全部、崩れていく音がする。
ナヨっちい。
本来、親玉という存在は、統率能力がずば抜けているのみならず、独りの時においても一騎当千でなければならないのだ。
どんなに相手にセコされても、まっすぐそれを突き破らなければならないのである。
それが、どうしたことだ。
俺の有り様を見ろ!
ああ、これが現実なのか?それとも俺がその器でなかったということか??!
何が悪かったんだ。何が…。
ポチの姿がまざまざと蘇る。
俺の子分は、みんな用事。用事用事用事。
対してあいつは。
いやいや、奴と比べるなんてとんでもない。
奴は言うなれば、最終的に正義に滅ぼされるために存在している、引き立て役のヒールなのだ。
すると、もちろん正義とは俺のことになる。
滅ぼす。滅ぼす?
あいつを?
どうやって?
不可能なんだ。あんなデカい敵。
どうにでもなってしまえ!
角を曲がる。また曲がる。
全然違う。
陽はわずかに傾いている。
時間的に余裕。
精神的にキツキツだ。早く帰りたい。
隣を自転車に乗ったおばさんが通り過ぎて行った。
数歩すれ違ってからそのことに気がつき、振り返り、手を差し伸べ、「待ってくれ」と叫びそうになる。
これが、男か?
ドン底まで、引きずられるまま沈んでいって、それでも自力で乗り越える、それが………。
うう、我が信念よ、信条よ、どうか、どうか…。
そんな俺に気づくわけもなく、自転車は消える。
言えなかった。
喋れば伝わるはずなのに、言えなかった。
「河井はどこですか」ただそれだけ。
大人にへつらいたくなかった?そりゃねぇや。
敬語を使いたくなかった?使う必要ねぇよ。乱暴な言葉遣いされて逆上する赤の他人なんて少数派だ。そういう奴に限って、河井がどこかを知らなかったりする。だからフルイにかけるって効果も期待できる。のに。
「河井、どこ」
そうだ、これだけで解決する問題なのに。ほら、こんだけ整理された文なら、乱暴でさえないじゃないか。
くそ!くそ!くそ!くそ!
知らない壁、知らない屋根。
ただ上を見れば知ってる空。
馬鹿やろ。カッコつけんな。こんな時に。
自分でツッコんで、それでようやく視線を下ろし、顔をまっすぐ向けられるようになった。
自分で、解決する。これだけは、決めた。
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