1人が本棚に入れています
本棚に追加
なぜそんな大型犬とお知り合いになったかだなんて、言えるわけもなかったので、そこは省略して伝えておく。
「ワンワンワンワン!!」
「…ボスが閉じ込めたのか?」
「んなわけねぇだろ。つべこべ言うな。さっさと捕まえるぞ」
「つ、捕まえるだってぇ?!」
後ろから素っ頓狂な声がする。
俺は平然を装って、「そうだ。拉致するんだ」と答える。
「どうして?」
「まぁ、これは避けられない試練なんだ。こいつをまず、倒さなければ」
言いながら後ろを向く。
すると子分達が顔を見合わせているのが分かった。
「行くぞ。取り押さえるんだ。一発で成功させる」
「いやいや、それは流石に怒るって」
「怒る前に捕獲だ」
「確かにちょっとは広くはなったけど、見えないのに、無理だよ」
「無理とか言うな!」
俺は叫んで、三人を制す。
「良いか。時間がない。奴は毎日やって来る」
「奴?」
「構うな!聞くな!馬鹿っ!!」
「ええー?」
いきなり痛烈に叱られて、よく分からない一人の子分。
地雷を踏んだお前が悪い。
「良いか!カンちゃんとムックは後ろ足をに回り込んでがっちり掴め。俺とテッチは前足を仕留める。仕留めたらすぐにその足を上に引っ張り、そのまま外に連れ出す」
「そんな!嫌だよ、前足だなんて!噛まれちまう」
テッチが足を止めた音が聞こえたので、俺はさらに激昂する。
「このやろ!テメェ男らしくねぇぞ。…よし分かった。そんなに言うなら仕方ない。まずお前を太郎の前に転がして囮にして、太郎が気を取られた隙に三人でやる!」
「俺噛まれるじゃん!」
「だったら!!だったら言う通りに動け!」
「ふぇぇ」
……来なければ良かった。と呟いたのも、俺には聞こえたが、そればっかりは見逃してやった。
「突撃じゃあ!!」
「わんっ!ワンワンワンワンッ!」
俺の声とポチの声が激突する。
意を決した子分三人も駆け出し……
「何やってる!!!」
!!!!
みんなビックンと動きを止めた。
「全員出て来い!!コラァ!!」
鋭い声だ。どこかのオヤジに見つかったのか。
「ど、どうしよっ!だから俺はっ…!!」
誰かが口早にそんなことを言う。
だが、俺が下した決断はこうだった。
「お前ら!向こうに走り切るぞ!」
「え?」
「急げ!」
バタバタとスピードを上げる。
あっちにも、光の口が見える。外に繋がってるんだ。なら、あっちに出てナンボか走れば、絶対に逃げられる。
最初のコメントを投稿しよう!