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それまでは大人しい男の子だったんだぜ?と彼は言う。 「だがな、お前のようなガキ大将が後から後から湧き出てきてのさばってくることには我慢ならなかったんだ。そんな奴らに呑み込まれるなんて、あってはならねぇことだと思ったんだよ。…そんな時に、そこの公園で、段ボール箱に入れられた、こいつを見つけたんだ」 「それが、ポチ……」 「そうだ。当時は、まさかこいつがここまで大きくなるとは予想つかなかったんだけどな」 そんな経緯(いきさつ)があったのか。 俺の知らないところで、ゆとりっ子も、悶え、葛藤し、自分なりの答えを導き出そうと努力していたんだ。…そういう輩(やから)も、いたってのか。 「いや!ちょっと待て!!」 感心しかけて、俺は大切なところに気がついた。 「…なんだ?」 「てめぇの両親は物分かりが良い側の人間か」 「む?」 「子供なら!!たとえ動物を拾ったとしても、家では飼えないから捨ててこい、なんて大人に追い返されるのが当然じゃないか!」 俺が声を裏返して叫ぶと、その男はいよいよニヤついて、「まぁ、それが通説だわな。父ちゃんが獣医でもない限り」と言ってのけた。 「ま、まさか、お前の父は……」 「いや、ただのしがねぇサラリーマンさ。犬猫の命を左右するなんてできるもんかよ」 「それじゃ、どうしてお前は…っ!」 ビクン、と肩が上がった。 そいつが俺の頭に手を置いたからだ。 「…おいおい、そんな怖がんなくたって良いだろ。なぁ?大将」 「くっ……」 「教えてやるよ。…………あのな、まず考えてみろ。男を、男たらしめているものは、なんだ?」 「………?」 「3秒やるから。…1、2、3」 その男は三度手を叩いて、「ほら」と急かしてくる。 俺はたじろぎながらも、「プライドだ」と短く答えた。 「おう、そうだな。じゃ、他には?」 「ほ、他?」 「1、2、3」 「……力だ。強さだ」 「おう、他には?」 「………。ポコチン、だ」 「他は?」 「……………」 他。他? 俺が答えを探していると、やがてその男は口を開いた。 「それはな、行動力だ」 「!!!!!」 彼はゆったりと顔を緩ませていた。 それから、囁くように語りかけてくる。 「お前も男なら、自分を押し通せ。やりたいことをやれ。たとえ大人がのしかかってきたのなら。……、良いじゃねぇか。コソコソしても。それでも立派な男だからよ」
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