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第四章 仕立て屋
その仕立て屋は、兄弟三人で店を営んでいた。ホリデイシーズン向けの納品も終え、眠そうな表情でサンドイッチを囓る彼は、華奢な体つきで近所の娘から視線を集める程の整った面立ちをしている。
優しげな目もとを何度も瞬かせながら、サンドイッチを食べきり、そのままテーブルに突っ伏した。仕事の無い日は、食べるか寝るかばかりなのだ。寝るならベッドに入れと言われるのだろうなと思いながら目を閉じる。意識が闇の中に吸い込まれそうになったその時。
「兄貴、お客さん!」
「毎度ありがとうございます!」
弟の声に、思わずそう叫びながら顔を上げる。一体誰がやって来たのか、注文内容は何なのか、それを確認する為に、身嗜みを整えて応接間へと向かった。
高価な物では無いけれども上品にまとめられた応接間で、今回やって来た常連客のアモバンの話を聞く。
「実はね、エレオノール様のドレスの仕立てを頼みたいんだよ」
「エレオノール様?」
とは誰だろうと、疑問に思う。それを察したアモバンは、簡単に説明する。
「王女様だよ」
「なるほど、王女様ですか。
……王女様! え? 何で僕に?」
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