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「ウィスタリア君、そんなに恐縮しなくても大丈夫だよ。私も、セイエン君の方が良いかなって思ってたんだ」
それを聞いて、院長がアモバンに一礼してから口を開く。
「お言葉ですが、条件に最も近いのはウィスタリアの方かと」
「そうかい? セイエン君も十分に条件を満たしているよ」
おっとりとそう言うアモバンに、セイエンと呼ばれた歌手が一礼をして、嬉しそうにしている。
「ご指名ありがとうございます。
微力ながらも、王女様の為のパーティーを彩るために、尽力させていただきます」
艶やかに笑う彼に院長が声を掛ける。パーティーの時にどの曲を披露するのか、王女に選んで貰うための楽譜を用意しろとのことだ。
セイエンと、ついでにウィスタリアも部屋を出た後、アモバンが少し申し訳なさそうな顔を院長に向けた。
「なんだかすまないね。急に難しいお願いをしに来てしまって」
「いえ、王女様の仰せなら、喜んで。
それにしても、ウィスタリアには後できつく言っておかないと」
「いや、そう言うことはしなくて良いんだよ。急な事だし、ね?」
慌てたような領主の言葉に、院長は渋々といった様子で納得した様だ。それから、院長との間に契約を交わし、アモバンは音楽院を後にした。
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