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第七章 綿布のドレス
カミーユが王宮に泊まり込んで作業を始めてしばらく。なんとかパーティー当日前に試着も済ませられると言う頃に、王女から注文を受けたドレスを縫い終わった。
クリーム色の地に、鮮やかな青や赤で描かれた大輪の花。そんな柄の布であるから、施す刺繍も面積が少なく、それに救われ納期に間に合ったという感は否めない。
ドレスにアイロンをかけ、トルソーに着せ、片付けなどを手伝ってくれている弟に声を掛ける。
「ああ、出来た……仕上がったよ……」
「兄ちゃんお疲れ様。何か食べたいものはある?」
「おふとん……おふとんをお腹いっぱい……」
「そうだね疲れたね取り敢えず寝ようか!」
ここ一週間ほどは殆ど眠らずに作業をしていたのを知っている弟に、ベッドへと運び込まれる。それから、王女にドレスが出来たという報告をしてくるという弟の声が聞こえた後、意識を失った。
そして翌日。お腹いっぱい朝食を食べた後、エレオノールがドレスを試着するというので、カミーユはそれに付き添った。
釣り鐘形に広がる艶やかなスカートと、たっぷりのボビンレースをあしらった、口の広い袖。パーティー当日に使う予定だという、鈍く光るジュエリーも身につけている。
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