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第二章 ジュエリー職人
彼はいつも、社交界で注目を集めていた。
短く纏めた深い琥珀色の髪、透き通るように白い肌、それを引き立てるような赤い唇。けれども体つきはしっかりとしていて、婦女子の視線を集めないわけは無かった。
彼はこの街に住む中流貴族で、同時にジュエリー職人だった。
その彼の元に、ある日いつも注文をくれている領主が訪れた。白い壁紙が貼られ、豪華さよりも清楚さを感じるシャンデリアが下げられた応接間で、お茶を飲みながら今回の要望を訊く。
「実はね、エレオノール様がジュエリー職人を探していて、是非デューク君に頼みたいんだよ」
「エレオノール様が?」
デュークと呼ばれた青年は驚きを隠せない。王女エレオノーラに相応しいジュエリーを作れる職人は、この街は勿論、探せば他の街にだって居るはずだ。なのに何故、領主アモバンが自分にこの件を依頼するのか、疑問だった。
その疑問を察したように、アモバンは懐からノートを出してデュークに見せる。
「納期がこんな感じなんだけれどね」
「アッ、ハイ」
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