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第三章 貿易商
背の高い従者を連れた彼は、まだ若い貿易商だ。この街で最も多い顧客を持ち、客から信頼を集めている彼だけれども、その容貌は今だ少年らしい瑞々しさを残していた。
その彼の元に、得意先のひとりである領主アモバンが訪れた。訪れる前には余裕を持って連絡をしてくるアモバンが、珍しく急ぎの用だというので、驚きながらも応接間へと通し、話をしている。
木目が密でどっしりとした家具が置かれる応接間に、甘い紅茶の香りが漂う。
「そう言うわけで、エレオノール様のご要望にお応えできるような品を揃えて欲しいんだよ。ソンメルソ君、お願いできる?」
突然の事で申し訳ないと思っているのだろう、遠慮がちな口調でそう言うアモバンに、ソンメルソと呼ばれた青年が答える。
「そうですね、今から発注するとなると、届くのは来年の今頃になりますが、今有る物の中から選ぶというのであれば、ご用意させていただきます。ですが、何故俺をご指名に? 他にも貿易商は何人かいますが」
彼の疑問に、アモバンは懐からノートを取り出し、指し示しながら言う。
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