乾きと蜜柑

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 目が覚めたら喉がカラカラだった。  足下の温もりを感じながらむくりと起き上がる。火照った首筋に触れるとじっとりと汗ばんでいた。乾いたせいだろうか、頭がぼんやりする。けれども飲み物を取りに行くために立ち上がるのは億劫だった。  こたつの上に乗った蜜柑の山に手を伸ばす。一個手に取るとそれは確かに柔らかく、爽やかな香りを放っていた。  黄色い皮を剥いて中に入った房を大雑把に半分もぎ取り、口に詰める。それから噛みしめると、甘酸っぱい汁が喉に滲みた。 「こたつで寝てたの?」  初詣から帰ってきた姉さんが呆れたように言う。仕方ないじゃないか、こたつは暖かいんだ。  姉さんもこたつに入り蜜柑を剥く。山が消える頃には乾きも癒えた。
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