春まで待てない!

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春まで待てない!

「入ってくれ」 「失礼します」  恰幅の良い男の号令に従い、細面の青年が緊張気味に入ってくる。  二人きりの部屋は、しんとした空気で満たされていた。 「君を呼んだのは他でもない、例の件だ」  例の件、などと言って通じ合える間柄であるから、男たちは初対面ではない。むしろ、肩をがっちり組んでやってきた、旧知の仲である。  では何故、青年の表情は硬く、緊張に包まれているのか。 「これに失敗すれば、うちは終わりです」 「わかっている。わたし自ら、寝る間を惜しんで考えた、渾身の案だ」  まずは見てくれ、と男が書類を広げ始める。  ここは小さな会社の、小さな会議室。社運を賭けた新製品開発のための会議が、まさに始まったところだ。恰幅の良い男はこの会社の社長で、青年はその右腕というわけ。
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