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「なんですか、これ」
怪訝な顔の青年に対して、社長は自信満々にふんぞり返り、「わからんかね」と言った。
「はあ。ご説明頂けませんか」
わからんから、聞いているのである。
柔らかな語気に反して、青年は拳を握り締めていた。
それを知る由もない社長は嬉々として続ける。
「こたつむりだよ! どうだね!」
「なるほど、却下です。お一人様用の商品は他社で何年も前から出ていますし、デスク型のものもあります。ネーミングセンスも使い古されていて、目新しさが全くありません。これに社運を賭けろと? ご冗談でしょう?」
一呼吸も置かずに切り返した、見事な袈裟斬りであった。
くあ、と呻き声をあげて社長がのけぞる。
ただし、上半身だけだ。何故なら、彼らがいるのは、こたつの中であるからだ。向かい合って正座の構えである。
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