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「そろそろ良いですか?」
「あっ、すいません。あんまり綺麗だったから……それから、あの……」
「何ですか?」
「あの、手を離して貰っても構いませんか?」
「嫌ですか?」
「そう言う訳ではないんですが、あの、恥ずかしいので……」
「ハハハ……。それなら大丈夫ですよ。誰も見ていませんから」
星野に言われて周りを見たが、確かに誰も居なかったのだが、ずっと手を繋いでいて汗ばんでいたし恥ずかしいと優子は思った。
「それじゃ、橋を渡ります」
「はい」
星野が握った手を離そうとしないので、優子は諦めて返事した。
時の川に架かる橋は金色に輝く美しい橋だった。その橋を渡りながら流れる川面を見ていると、うっとりと心がときめいてくる。優子はこの世のものとは思えない程の美しさにしばし見とれていた。
「もう、良いですか?」
クスッと笑って星野が言った。
「ああ、すいません。あんまり綺麗だったから……つい」
優子は後ろ髪を引かれながら、星野と手を繋いで橋を渡った。
「まずは、この家へ行って下さい。ここはあなたの家です」
「ええっ、ここは初めて来た所ですよ。私の家じゃありません」
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