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すると星野は可笑しそうにクスクス笑いながら、
「……そういうことです 」
と言った。
「そういうことって、あの……」
優子は自分をお母さんと呼んでいた女性に
「ちょっとすいません」
と軽くお辞儀してから、星野の腕を掴み少し離れた所に行って小声で話しかけた。
「あの、全く意味が分からないんですけど、これはどう言うことですか?」
「それではお話ししましょう。優子さんは30年前の高校生の頃に文通をしていましたよね」
「はい」
「その時文通をしていた小坂直人さんと高校を卒業した後に会いましたよね」
「確かに、そんなことはありましたけど、
でも、どうして星野さんがその事をご存知なんですか?」
「2回目に会った時に小坂さんからプロポーズされませんでしたか?」
「ええ、結婚を申し込まれました。でも、断りました」
「確かにそうですね。
……でも、あの人達はあなたが小坂さんとあのまま結婚したら、こんな生活を送っていると言う、世界なんです」
「ええっ、……何か私、頭の中が混乱しています」
優子の頭の中はパニック状態だ。俯き加減になり、こめかみを人差し指で何度もつつきながら考え込んでいた。
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