あらすじ

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目覚めるとそこは野外階段の踊り場だった。 男には昨日までの記憶がなく、それどころか自分が何者かも思い出せなかった。 踊り場には食べかけのパン、使用済みの避妊具、ライター、刃物、某N社が開発した非合法の記憶消去薬、そして……女物のTバックなど、なぜここにあるのか分からないものばかり。 考えがまとまらないまま、落ちていたものを回収し街を歩いていると、なぜか男の周りを怪しい黒服の集団が付けていることに気付く。不振がり、一目散に走る男。すると黒服は男を追いかけてきた。 そこで男は思う。「ああ、僕は何者かに狙われているんだ」と。 そして逃げている途中で力尽きて、あの踊り場で眠ってしまったのだ。 男は思う。恐らく自分は組の女に手を出してしまった。それが原因で黒服たちの怒りを買ってしまった。 きっと二人は相思相愛だったのだろう。でなければ避妊具が使用済みのはずがないし、何より男の頬には女性のキスマークが付いていた。 しかし二人の恋は決して許されるものではない。組に囚われた自分の思い人は、今も暗い檻の中で幽閉されているのだろう。 ならば救いに行かなければならない。男は立ち上がり、黒服の目を欺きつつも、僅かな情報から敵のアジトを見つけ出し、その中に自分の思い人らしきメイド服の女を見つける。 安堵し、メイドに手を伸ばす男。 しかし不敵に笑った女が男に放ったのは、あまりにも意外な言葉だった。 「おかえりなさいませ。坊ちゃま」 「……は?」 女の話によると、どうやら自分は某N社の御曹司らしく、満たされていながらも退屈な日々に飽き飽きしていた。 そんな中、自社の開発した記憶消去薬の存在を聞き、是非手にして普通の生活を送りたいと思った。スリル感を味わうため、いくつかの小道具を仕掛けて……。 ネタばらしをされた男は、安堵と拍子抜けで眠りに落ちる。そして男は、例の踊り場で、また別の道具と共に目を覚ます。
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