ウィーン国際ピアニストコンクール

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 『演奏者第60番 リオン・カトウ・シュベルツェンベルク』  放送がかかり、いよいよ最後の奏者、リオンの登場だ。  ピアノの弦は演奏が後になればなるほど、ステージライトで温められることによって緩んでくる。  最初にピッチを444ぐらいで張っていても、時として最終奏者の頃には440ヘルツを切っていることもある。  ピッチが高い方が華やかで明るい響きになる為、順番が早い方がピアノのコンディションとしても有利だと言われる。  実際、僕が演奏していた時よりもピッチはやや低くなっていた。  これがどう、リオンの演奏に影響が出るのだろう……  リオンが舞台に上がってきた。  最後の奏者としての緊張感や疲労は、無表情な彼からは読み取れない。  眼鏡のブリッジを軽く持ち上げると、リオンは長く重い前髪を揺らして舞台正面で礼をした。
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