ウィーン国際ピアニストコンクール

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 ウィーン出身で、9月からは同じギムナジウムの音楽科に通うことになる、同い年のシュテファンだ。  背が高く、がっしりとした肩幅に面長の尖った顎にダークブロンドのウェーブがかった髪。皮膚の色と同調している太い眉毛に角ばった鼻梁、切れ長の鋭く細い青い瞳をしている。  一気に僕のテンションが下がった。  シュテファンは父親が作曲家、母親が声楽家であり、姉がヴィオラ奏者という音楽一家に育っている。いかにも金持ちの子息といった雰囲気がキートン校を思い出させ、嫌悪感を抱かせる。  彼は幼い頃からピアノを習い、モルテッソーニよりもピアノ講師としては経歴の長い、ポッシュ女史に師事している。ポッシュ女史は今までに数々の教え子がおり、その中に何名ものコンクール受賞者を送り出しており、別名『ピアノコンクール優勝請負人』と呼ばれている。  モルテッソーニはポッシュ女史とはウィーン音大の時の同期生だったらしいが、彼女のことが苦手だったと話していた。  前回のピアノコンクールで彼は2位で、3位だった僕は辛酸をなめた。
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