ウィーン国際ピアニストコンクール

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 「おい、リオン。お前は何番目になったんだ」  シュテファンがリオンの手からくじを奪い取った。  「『60』って!!   お前、一番最後なのかよ。運がねぇーなぁ」  シュテファンは口では同情するようなことを言っているが、その表情は嬉しそうだった。  リオンは相変わらず無視を決め込み、フイと顔を逸らした。  シュテファンのように明らさまな態度は見せないものの、ここにいる誰もがリオンがラストに演奏をすると聞き、安堵した表情を浮かべていた。  たとえコンクールの外では友人であっても、今この場所には仲間なんていない。  ここにいる誰もが、自分のライバルなのだ。  
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