ウィーン国際ピアニストコンクール

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 深呼吸し、瞳を閉じる。  舞台では、最初のコンテスタントが既に演奏していた。    ハイドン、ピアノソナタ52番か……よし、被ってない。  テンポが速いな……あ、音が外れた。  コンクールの雰囲気に呑まれ、自分の演奏を見失っているようだ。  一番始めに演奏するという独特の緊張感もあるのだろう。  僕は、絶対にそんなことにはならない。  今日のために、必死に練習してきたんだ。  シューイチからまだ、学ぶべきことが、学びたいことがたくさんある。  彼と共に……ピアニストとしての高みを目指したい。  こんなところで、僕は終わらない。
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