ウィーン国際ピアニストコンクール

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   あ、そうだ。ハンカチ……  思い出して横を見ると、既にリオンはいなくなった後だった。  シュテファンに関心がなさそうにしてたけど、ほんとはあいつの演奏が気になって、わざわざ聴きに来たのかもしれない。  今、何人の演奏が終わったのかは分からないが、会場にはちらほら演奏を終えた奴らが他の参加者の演奏を聴くために集まっていた。  リオンがいなくなった後で隣に立った奴は、まだ演奏の緊張が抜けきらないのか、手を胸の前で合わせて組んで祈りのポーズをし、ブツブツと何か唱えている。  一時予選が通るように、今から祈っているのか?  そう考えていると、ピアノの演奏が一瞬止んだ。  「失敗しろ、失敗しろ、失敗しろ、失敗しろ……」  一心に唱え続ける声が耳に飛び込んできて、思わず隣に視線を流すと、思い詰めた表情に喉がゴクリと鳴る。  病んでんな……  
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