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独りでピアノを弾く時、必ずシューイチは切なく哀愁に満ちた曲ばかりを弾いている。
胸に秘めた想いを、ピアノに託すように。
華やかで美しく、自信に満ち溢れ、誰もが彼の魅力の虜になるシューイチ。
そんな彼に、こんな切ない演奏をさせるのは誰なんだろう……
雨が、しとしと降っている。細かい雨が窓に張り付き、糸のような線を引いていた。
雨の音に混ざって聞こえてくる『別れの曲』は、哀愁を一層深める。
ねぇ、シューイチ……
その心の隙間を、少しでも僕は埋めてあげることは出来るのかな。
そうなれたら、いいのに……
シューイチの部屋の壁に手をつき、額を当てる。
雨はいつまでも、降り続いていた。
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