コンクールに向けて

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 シューイチは、迷惑そうに肩を竦めた。  「ちょっと待って下さい、モルテッソーニ。いくら貴方が他の指導で忙しいからと言って、私に厄介ごとを押し付けないで下さい。   私はここに指導に来ているわけではないのですよ。ピアニストとして、より高みを目指すためにウィーンに留学しているのです。   これから、オケとの共演やピアノリサイタルも控えているというのに、こんなことに時間を割く余裕などありません」  「私はお前たちの指導をしている中で、たくさんのことを学んできたし、もっと早くにしていればピアニストとしての演奏にも生かすことが出来たのにと後悔もしている。   お前は自分の信じるものへのこだわりが強すぎる。ここで、レオの指導をすることにより、何か打破できるものがあるかもしれん。   それに、シューイチとレオはレベルとしてはかなりの差があるが、スタイルも趣向も似ているところがある。それに、レオはシューイチの信奉者だしな。   何事も経験だシューイチ、やってみなさい」  モルテッソーニはシューイチを力強く説得した。  二人の話を聞いてハラハラしつつも、もしシューイチがこの話を承諾したら……と思うと、興奮で色めき立たずにはいられなかった。
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