コンクールに向けて

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 「テンペスト」が作曲されたのは1802年。  この頃のベートーヴェンは、年々悪化する難聴への絶望感から『ハイリゲンシュタットの遺書』を記し、自殺も考えた時代だった。  表題はもともと付いていたものではなく、ベートーヴェンの弟子アントン・シンドラーがこの曲の解釈について師に尋ねたところ、「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と言ったということに由来する。  「テンペスト」とは「嵐」の意であり、 シェイクスピアの作品では嵐によって船が難破し、漂流した島に復讐を目論む兄が待ち構えているところから話が始まっている。  作品31の中でも特に革新的で劇的な作品であり、3つの楽章の全てがソナタ形式で作曲されている点もこの作品のユニークな点のひとつだ。  数あるベートーヴェンのピアノ・ソナタの中でも、緊張感や切迫感が非常に高く、また、テンポ、拍子、間の取り方においても難しい曲だと言われており、その中でも第3楽章が最も有名だ。
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