コンクールに向けて

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 「音符の数が少ないですので譜読みはさほど難しくありませんし、レベル的にもそれほど高難度という曲でもありませんので、コンクール1次予選の課題曲としては適当でしょうね。   一昨年のコンクール受賞者にもこの曲を選んでいた方がいましたし、審査員の傾向と好みにも合っているかと思いますし」  シューイチはモルテッソーニに言われて嫌々僕の指導を引き受けたと思ってたのに、ちゃんとコンクールについて調べてくれていたということに驚き、同時に嬉しさがこみ上げてきた。  「何をにやけているのですか、さっさと演奏を始めて下さい」  「は、はい!!」   姿勢を正し、緊張で冷たくなった指をマッサージしてから、指を鍵盤へと触れる。  いよいよシューイチに演奏の指導をしてもらえるのかと思うと、興奮で血液がドクドクと大きく脈打った。
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