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「じゃ、じゃあシューイチの『テンペスト』を僕に聴かせてよ!
分からないんだ、どう表現したらいいのか」
「ですからそれは、貴方なりの解釈を見出して表現して下さいと先ほど述べたでしょう」
「お願い……一回でいいんだ。
そうしたら、シューイチの演奏を耳に刻み込むから」
一瞬眉を顰めたシューイチに諦めかけると、彼の手が僕の肩に触れた。
「代わって下さい。
一回きりですからね」
「う、うん!ありがとう、シューイチ……」
即座に立ち上がり、シューイチに席を譲った。
シューイチは椅子の位置を調節し、髪を後ろに指で梳くとゴムで纏めた。
すぐ目の前にシューイチが座り、彼の長くて細い指が視界に入り、喉をコクリと鳴らした。
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