コンクールに向けて

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 鍵盤からシューイチの指先が離れても、彼が立ち上がっても、僕は立ち尽くしていた。  圧倒的な嵐に呑み込まれたまま、どうすることも出来なかった。  シューイチが短く息を吐き、側に置いてあったティッシュの箱を僕に手渡した。  「まずは、その酷い顔をなんとかしてください。   練習はそれからです」  シューイチの言葉にハッとする。  僕は感情の溢れるまま、涙を流していたのだった。  どうしてこの人の演奏は、こんなにも僕の魂を揺さぶるんだろう。  僕も、シューイチみたいな演奏がしたい。  彼のように、なりたい……
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