259人が本棚に入れています
本棚に追加
鍵盤からシューイチの指先が離れても、彼が立ち上がっても、僕は立ち尽くしていた。
圧倒的な嵐に呑み込まれたまま、どうすることも出来なかった。
シューイチが短く息を吐き、側に置いてあったティッシュの箱を僕に手渡した。
「まずは、その酷い顔をなんとかしてください。
練習はそれからです」
シューイチの言葉にハッとする。
僕は感情の溢れるまま、涙を流していたのだった。
どうしてこの人の演奏は、こんなにも僕の魂を揺さぶるんだろう。
僕も、シューイチみたいな演奏がしたい。
彼のように、なりたい……
最初のコメントを投稿しよう!