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なんだそんなことか、流石に俺以上の歳ではなかろう。ある程度の年上は構わないが、どうもそれ以外に何か言い難い理由があるようにもみえる。愛は理恵に目線を送り何か言い辛そうだ。
傍に居る理恵に背中を押され、愛はやがて口を開いた。
「それで、もうおなかに赤ちゃんが居るんだよね」
「そっ、そうか――」
流石の俺も、妊娠しているとまでは予想していなかったから少し動揺した。
ほんの少し前まで鼻水を垂らしたガキだったくせに、いつの間にそんな女になってしまったのか。お父さんは悲しいぞ……。
しかし俺も理恵に同じことをしたではないか。俺は、理恵の父親の気持ちを思うと、愛を妊娠させた男を責めるよりも先に、自責の念に苛まれるのであった。俺も、理恵の父親を見習って耐えねばならない。
そして自棄になった俺は開き直るしかない。きっと理恵の父親も同じ気持ちだったことだろう。さぁ言え、早く言え、相手はどんな奴なんだ、よそ様の可愛い一人娘を妊娠なんかさせやがって! こんちくしょう!
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