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バレンタインデーの奇跡
バレンタインデーに告白され、妻と付き合い始めてから、はや二十年。
当時、あんなにも愛らしかった彼女もさすがにくたびれて、炬燵に寝そべり年頃の娘の相談に乗っている。
そして、しがないサラリーマンである俺は、遠慮がちに炬燵の隅に足を寄せているのだった。
おりしも、今日は妻と出会ったセント バレンタイン デーではないか。確かその年も、独り者の俺は親友の色川良男と寂しく男二人のバレンタインデーを過すことになる筈だった。
色川とは、大学で知りあったばかりではあったが、二人とも女にはとんと縁がないらしく、カップルのイベント時期を迎えると、二人でヤケ酒を飲み、夜を明かすのがお決まりのコースとなっていた。
生まれてこの方、異性とお付き合いなどしたことなかった俺に引き換え、色川は実のところ放っておいてもモテるタイプであった。が、俺に遠慮をしてか、彼女を紹介したりすることは、ついぞなかった。
彼曰く、自分の理想に適う女性が見つからないから。などと贅沢なことを言ってはいたが、色川もまた女性とは縁遠い生活を送っていたのではないかと思われる。
一緒に合コンに参加しても、モテるのはいつも色川ばかりだったが、女の扱いを知らないからなのだろうか、その後付き合ったといった話は聞かなかった。
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