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そんな腐れ縁の俺達に転機が訪れたのが、その年のバレンタインデーだった。
当時は色川の友人で、今は俺の女房になっている理恵は、突然俺をキャンパスの一角へと呼び出して、丹精込めて作ったであろう綺麗にリボンで飾られ包装された、イニシャル入り手作りチョコレートを手渡すと、なんと俺に愛の告白をしたのだ。
「あの、呼び出したりしてごめんね。飯田靖耶君だよね?」
幾分舌っ足らずな言葉使いで、恥ずかしそうに俯きながら差し出されたチョコレートの箱に、俺は一世一代の運命的の出会いを感じていた。
とはいえ、当たり前と言えば当たり前なのだが、生まれてこの方、一度も異性と付き合ったことも、ドラマでよく見掛ける男女の恋愛模様的会話さえも、俺はこのときが初めての経験だったのである。
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