バレンタインデーの奇跡

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「お母さんたち学生結婚なんだ! 歳もあたしとそんなに変らないよね」  大学生となり、最近色気づいてきた娘が、母親と昔のアルバムを眺めながら何やら異性関係の相談をしているらしい。 「でもなんで、お父さんみたいな冴えない学生と付き合ったの?」  そんな無礼な声が聞こえてきても、俺はもう家庭の中では空気みたいな存在だから気にもしないし、娘もまた遠慮のない口をきいてくる。  その質問に、理恵は少し遠慮がちに答えた。 「お父さんに失礼じゃない。そうね、でもその時の私は失恋した直後だったから、お父さんみたいな鈍感な朴念仁でも素敵に見えたのかもしれないわね」 「えぇ~。写真を見ても色川さんの方が断然格好いいじゃない! あたし色川さんがお父さんだったら良かったのに!」  そんな、母娘して厳しいことを言うなよ。
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