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それにしても、理恵が振られた相手とはいったい誰だったのだろう? 理恵に目を向けると一瞬目線が合ったが直ぐさま逸らされた。理恵も当時のことを未だに気にしているのだろうか。だとすると、もしかすると理恵を振った相手とは……。
今でこそ丸みを帯び立派なおばさんになってはいるが、当時の理恵はモデルになっても不思議ではない程の美人女子大生だった、それを振るなんて俺の身近な人物にはアイツしかいないではないかと察した。
確かに、拘りが強い奴なら理恵のような美人であっても振ることだろう。色川の身近に居た俺は、そんな可愛そうな女の子たちを何人も見てきたからわかるのだ。
ここで少し、父親の存在感をアピールしようと自己顕示欲が頭をもたげた。
「理恵さん程の美人を振るなんて、とんでもない奴だよなぁ」
それに理恵は愛に向けた目線のまま答える。
「なんでも好きな人が居るんだけど、絶対に結ばれない相手だとか言っていたわね」
「ふう~ん」
相変わらず俺は空気のようだ。
もし理恵を振ったのが色川だとして、その色川を振るような女とは、いったいどんな女なのか一度見てみたいものだとも思ったが、俺の通った大学に理恵以上の美人など居ただろうか? 俺には心当たりがなかった。だとすると年上好きとか? はたまたロリコン! いやいや、まさか色川に限って――、それはさすがにないよなぁ……。
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