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バレンタインデーの出来事
「それじゃあさぁ。言ってもいいよね? お母さんも早くに結婚したんだし、バレンタインデーでもあるし、これも何かのお引き合わせだと思うんだ」
もったいぶった愛の言い回しに、俺は何か嫌な予感がしたのだが、愛ももう年頃の娘なのだから、娘を持つ父親として覚悟はしておくべきだとも思った。
それに、理恵が一向に反応しないところを見ると、きっと二人の間ではすでに話がとおっているに違いない。知らないのは俺ということか。
「ねぇ、お父さんに、大事な話があるんだけど。いいかな?」
そらきた、こんな時だけ父親面させるつもりか、この現金さはいったい誰に似たのだろう。まさか色川に、なんてことはないよな。色川がそんな大それたことをする性格でないことは、親友である俺が一番良く知っている。
「なんだ? あらたまって」
珍しく真面目な顔をした愛は俺の顔を直視し、何か重要なことを話すつもりらしい。まぁ、娘がする真面目な話なんて大体の見当はつくものだ。さて、少しは父親らしく大袈裟に驚いてやろうか。
「どうかしたのか?」
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